胃がんの内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の実際

ここでは、S-Oクリップ(洗濯ばさみにバネとヒモが付いたような処置)を用いた、胃がんに対するESDをご説明します。当科では、S-Oクリップを用いた方法を研究しており、有効性を報告して来ました。研究内容は、Gastrointestinal Endoscopy 誌 (2021年)、Surgical Endoscopy 誌(2020年)、VideoGIE 誌(2019年)に掲載されています。

黄色い矢印の内側に約 2 cmの胃がんを認めます。

特殊なモード(NBI)で胃がんの範囲を確認し、胃がんの外側に電気メスで目印となるマークを付けます。

胃がんの周りにマークを付けました。

マークの少し外側を電気メスで切開しました。この後、粘膜の下の組織(粘膜下層)を剥離しますが、今はまだ粘膜下層があまり見えていない状態です。

S-Oクリップを病変に取り付け、もう一つのクリップで紐の部分を対側の胃壁に留置します。こうすることで、S-Oクリップのバネの部分が伸びて、粘膜下層を展開します。

粘膜下層(青い部分)が展開しており、電気メスで剥がしやすくなっています。

胃がんの切除を完了しました。切除部位は一時的に人工的な胃潰瘍が出来ますが、2か月程度で治ります。

胃がんをESDで切除し、体外に取り出し、ピンで伸ばして固定しています。周りの白い点は電気メスで付けたマークです。顕微鏡での判定(病理検査)で、胃がんは完全に切除されており、治癒と判定されました。